今となっては知る人もかなり少ないですが開業当初は「股関節専門」と標榜していました。インターネット検索を行うと今では多くの股関節専門の治療院があることが分かりますが、その当時は片手で足りるぐらいしかいなかったように記憶しています。

臼蓋形成不全、変形性股関節症、関節唇損傷を中心に多くの股関節痛に悩む方のサポートをしてきましたので今でも股関節痛に悩む方への思い入れは強く残っています。

股関節痛を改善させるコツ

股関節痛を改善させるには「身体機能の向上」と「運動療法」の2つが欠かせません。

身体機能の向上では特に神経系に目を向けてあげることが必要です。そして神経系の機能向上に伴い少しずつ運動の「量」を増やしていきます。

一般的な股関節痛の保存療法では筋肉に目を向けます。筋肉は神経の連絡が正常に行われることで収縮します。そして筋肉が正常に収縮することで関節が正しく動きます。つまるところ、神経系を無視することは当然できない、ということになります。

脳も神経系ですので「神経」といっても多岐に渡ります。例えば、一般の人が目や耳にすることの少ない「深部感覚」も神経系で股関節痛とは切っても切れない関係にあります。

深部感覚は筋肉、腱、関節唇などにあり関節の位置筋肉の伸長を脳に伝える機能があります。長らく股関節痛を患った方で「どう歩いていいのか分からない」という言葉を耳にする機会がありますが、これはこの深部感覚が正常に機能していないことが1つの要因として挙げられます。

このように立つ、歩くなどの基本動作には神経系の働きが正常であることが欠かせません。神経系が正常に機能した状態で運動するのと、そうでない状態で運動するのでは運動効果が全く違ってくるため、まずは「身体機能を向上」させて「運動療法」を行うのが効率的です。

セルフケアは”軽め”の筋肉ほぐしが有効

Youtube などでも多く紹介されていますがテニスボールなどのツールを使って筋肉をほぐす方法はセルフケアとしては有効です。ただやり過ぎないよう、ほどほどに、を心掛ける必要があります。

股関節痛では深部感覚も関係してくることがあると説明しました。この深部感覚は無意識下で関節の位置や筋肉の収縮を感じる神経になります。深部感覚は運動から起こる刺激に反応する感覚でもあるので筋肉をほぐし過ぎることでこの感覚にも影響が及ぶことも考えられます。

筋肉は緊張と弛緩との間で絶妙なバランスをとっています。(現在の)身体にとって実は必要な筋緊張をほぐしてしまうと逆にバランスが取れなくなってしまう、なんてこともあるように思います。

初期の股関節痛であれば筋肉をほぐすだけで改善することも少なくりません。ただし、慢性的な股関節痛に関して言えば、この脳と連絡を取り合っている深部感覚を始めとした神経系の機能低下というのも関係してきますので筋肉ほぐしはセルフケアレベルでほどほどにが適していると考えています。

股関節専門の専門性

「股関節専門」と標榜していた時期にその看板を下ろしていいか当時の上長にあたる先生に相談したことがありました。これには理由がいろいろあるのですが、大きな理由が客観的に見て、自身が本当の意味での股関節専門と呼べない、そう感じたところにありました。

当時は「股関節」に関係している(してそうな)「筋肉」だけを施術対象としていましたので、もっと全体との繋がりを知る必要があると強く感じました。

今では多くの代替療法で「股関節専門」と標榜する治療院が増えてきました。これはこれで喜ばしいことではありますが、その反面、しっかりと強い意志をもって股関節痛に悩む方と向き合っているのかな、と首を傾げてしまいたくなることも少なくありません。

専門性を謳うことは私がいる治療院業界では珍しくありません。今後もワラワラと股関節専門が湧いて出てくることも考えられますので、発信している情報などを吟味して選択していただければと思っています。