DLPFC(背外側前頭前野)とは?

DLPFC(Dorsolateral Prefrontal Cortex:背外側前頭前野)は前頭前野の一部であり、私たちの認知機能や行動制御に深く関与する脳領域です。この領域は高次認知機能を担う重要な部分であり、特に作業記憶、注意の制御、意思決定、問題解決能力などに関わっています。


DLPFCの解剖学的位置と役割

DLPFCは前頭葉の外側部分に位置し、大脳皮質の他の領域や海馬、小脳、基底核などと広範に連携しています。以下のような役割が知られています。

  • 作業記憶(ワーキングメモリ):短期間の情報保持や処理を担う。
  • 注意制御:不要な情報を抑制し、重要な情報に意識を集中させる。
  • 意思決定と計画:未来の行動を予測し、最適な選択を行う。
  • 感情制御:扁桃体などの感情を司る領域と連携し、衝動的な行動を抑える。

DLPFCは、これらの機能を通じて日常生活の様々な場面で重要な役割を果たしています。


神経伝達物質との関係

DLPFCの機能には神経伝達物質の働きが不可欠です。特に以下の2つが重要です。

  • ドーパミン:報酬系や動機づけに関与し意思決定や作業記憶の効率を高める。
  • グルタミン酸:興奮性の神経伝達物質として DLPFC のネットワークを活性化する。

ドーパミンの低下は DLPFC の機能不全を引き起こし、注意力の低下や認知機能の低下を招くことが知られています。これは加齢や神経変性疾患(例:パーキンソン病)と関連が深い要素です。


加齢によるDLPFCの変化

DLPFC は加齢とともに機能が低下しやすい脳領域の一つです。以下のような変化が見られます。

  • 神経細胞の減少:DLPFC の灰白質が萎縮することで、認知機能が低下。
  • シナプスの可塑性の低下:新しい情報の処理や記憶の形成が難しくなる。
  • ドーパミンレベルの低下:注意力や意欲の低下につながる。

加齢による DLPFC の変化を遅らせるためには適切な運動や認知トレーニング、社会的交流、十分な睡眠などが有効であることが研究で示されています。


まとめ

DLPFCは、高度な認知機能や行動の制御に関与する重要な脳領域です。加齢や神経変性疾患によってその機能が低下する可能性がありますが、適切な生活習慣によって維持・改善することができます。次回の記事では DLPFC と慢性炎症の関係について掘り下げていきます。