DLPFC(背外側前頭前野)は作業記憶や注意制御、意思決定などの高次認知機能に関与する重要な脳領域です。近年、この DLPFC に対する頭部への振動刺激が脳機能の改善やリハビリテーションにおいて注目を集めています。
振動刺激とは?
振動刺激とは特定の周波数で機械的な振動を体や頭部に与える手法です。この刺激は筋紡錘や腱器官などの感覚受容器を活性化し神経系に影響を及ぼすことが知られています。例えば、筋肉の腱に約100Hzの振動刺激を加えると筋紡錘が活性化され脳活動が賦活されることが報告されています。
DLPFCへの振動刺激の可能性
DLPFCへの直接的な振動刺激に関する研究はまだ限られていますが関連する研究として経頭蓋直流電気刺激(tDCS)による DLPFC の活性化が注目されています。tDCS は 頭皮上に電極を配置し微弱な直流電流を流すことで特定の脳領域の活動を調整する非侵襲的な手法です。例えば反復した痛み刺激に対して右DLPFCへのtDCSを実施した研究では痛みの不快感や不安の低下が報告されています。
また、うつ病などの精神疾患の患者に対する左DLPFC への rTMS の研究では前帯状皮質や前頭眼窩野のドーパミン放出量の増加が示唆されており気分の改善に寄与する可能性が示されています。
振動刺激の応用と今後の展望
現在、DLPFCへの直接的な振動刺激の効果を検証した研究は限られていますが他の非侵襲的刺激法やリズム運動によるDLPFCの活性化に関する知見は振動刺激の応用可能性を示唆しています。今後、DLPFCへの振動刺激が認知機能の改善や精神疾患の治療、リハビリテーションにどのように役立つかを明らかにするための研究が期待されます。
振動刺激は非侵襲的で比較的簡便な手法であり適切に応用することで DLPFC の機能を調整し、さまざまな臨床応用の可能性を秘めています。これらの情報をもとに臨床でも期待以上の効果や興味深い身体的変化を確認していますので今後も更に発展・貢献していければと考えています。