「Long COVID」欧米では新型コロナの後遺症をこう呼んでいます。コロナワクチン接種後、コロナウィルス罹患後に慢性的な症状が長期に継続することは日本だけではなく世界中で注目されています。

当治療室でも第6波、第7波ぐらいから Long COVID に関係する相談が増えてきています。ここでは最近の研究で見えてきたことを紹介するとともに Long COVID に対するアプローチに関してまとめてみます。

後遺症の7大症状

図:日経サイエンス

上記グラフは2021年9月に開設された岡山大学病院 コロナアフターケア外来を受診された方の統計データです。

グラフを見て分かるように飛び抜けて多いのが倦怠感、そして嗅覚障害、味覚障害、頭痛がこれに続きます。このグラフの呼吸困難感までをアフターケア外来では『後遺症の7大症状』と呼んでいるようです。

岡山大学の大塚教授は「これらの7大症状は割合が多いだけでなく、治療が難しいのが特長です」と話しています。

例えば、呼吸困難は肺を診ても医学的な異常がないのに本人が息苦しさを覚えるケースが多く、頭痛や睡眠障害の影響により倦怠感に繋がるなど、1つの症状が他の症状と相関していることを問題として挙げられています。

後遺症に共通する特徴

コロナウィルスの後遺症について日々研究が進められています。直近で大きな反響があったのがコロナ後遺症の患者さんの免疫状態を調べた論文です。

その論文の中では後遺症がある人では血中のコルチゾール量が著しく低下していたこと、また血中に含まれる免疫細胞の変化(疲弊した T細胞、活性化した B細胞)が報告されています。

コルチゾールは代謝を制御するホルモンです。その量が圧倒的に減っていることが分かったことで倦怠感、やる気の消失、起床後のだるさなど、各症状との繋がりが解明されるキッカケになることを期待しています。

とはいえ、本研究を臨床に応用するまでは、もう暫く時間が掛かるかも知れません。ただし、医学的な所見で異常がないとされることが研究によって判明してくることの意義は大きいようにも思います。

自律神経系の機能改善が必須

施術をしていると「あれ?」と違和感を覚えるケースが多くなってきたタイミングでコロナウィルスに関係する情報を意識的に確認するようになりました。また、それと並行して臨床でどのようにアプローチするのが効果的か試行錯誤を繰り返しています。

その中で自律神経系へのアプローチはコロナウィルスの後遺症改善には欠かせない重要なトリガーだと感じています。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2系統の自律神経が一般的に説明されることが多いです。しかしながら、この2系統の自律神経系の説明では身体の内部でどのような変化が起こっているのかの理解が難しくなってしまいます。

専門的になりますが交感神経に関係するHPA軸、副交感神経系の背側迷走神経複合体、腹側迷走神経複合体の機能や特徴を理解することが患者さんと向き合う上で欠かせないと考えています。

HPA軸と迷走神経

HPA軸は動画の中で紹介されているようにストレスホルモンに関係してきます。そのホルモンの1つが先に紹介したコルチゾールです。

そして、迷走神経。ポリヴェーガル理論という自律神経の機能的側面の理解を飛躍させた概念があります。

ポリヴェーガル理論では副交感神経系の80%をしめる迷走神経に2つの機能的側面があること、そして脳や脳神経との関わりについて多岐に渡り関連書籍で説明されています。

例えば、免疫に深く関係する胸腺という組織があります。胸腺は迷走神経ときっても切れない関係で、先述した研究で取り上げられた T細胞を作る組織でもあります。更には耳鼻咽喉系との関わりも迷走神経は深いためコロナウィルス後遺症の7大症状に含まれる味覚や嗅覚異常では必ずアプローチするようにしています。

時間を掛けて少しずつ・・・

コロナウィルスが蔓延して世界中で大騒ぎしている中で海外の公衆衛生の専門家が過度な対策に警鐘を鳴らしていました。

必要異常に消毒することによって常在菌を死滅させてしまい体内の菌の環境が悪くなり、結果、免疫力が低くなり感染症に罹患しやすくなる、という内容だったように記憶しています。

コロナウィルスは今後も型を変えて生き残るでしょう。また、ワクチンの積極接種というのが日本の方針のように見えますので今後も後遺症で苦しむ方が増えるのではないかと懸念しています。

当治療室では安全な手法でコロナウィウルス後遺症改善のサポートをしています。何かしら力になれることもあるかも知れません。お困りの方は遠慮なくご相談ください。